【ニュース】 山梨県、「富士山登山鉄道構想」で鉄軌道を断念、ゴムタイヤ式新交通システム「(仮称)富士トラム」を発表 山梨県甲府市
2024.11.19
山梨県(長崎幸太郎知事)は2024年11月18日、これまで議論を続けてきた次世代型路面電車(LRT)を使用する「富士山登山鉄道構想」での鉄軌道を断念、レール鉄軌道不要のゴムタイヤ式新交通システム「(仮称)富士トラム」を発表した。
「富士トラム」は、富士山の課題とされている五合目の来訪者コントロールに留まらず、鳴沢村から山中湖村に広がる6市町村の富士北麓エリア、富士山とリニア新駅「山梨県駅」を直結し、リニアの停車本数の増加を目指すというもの。
同県内各地への二次交通網を構築することで、同県民の生活の向上、観光客誘致の促進や地域経済の活性化が期待できるとしている。
さらに、東京まで25分のリニア新駅がハブとなることで、企業誘致や移住定住者の流入にも貢献、同県のプレゼンス向上にも繋がるという。
同県は 2021年2月、富士山の世界文化遺産としての価値を守り、向上させるため、「富士山登山鉄道構想」を発表、富士スバルラインに鉄軌道を敷設し、LRTを運行させる構想を提案していた。
2023年度には、将来の事業化に向けた調査を実施、2024年9月に事業化検討に関する報告、10月には技術面の課題と総合的な事業化方針について調査報告を公表している。
一方、2023年11月~2024年1月にかけて、富士北麓の6市町村で同県知事が出席する「住民説明会」を開催、2024年6月~7月には同県職員が地域住民からの意見を聞く場を14回設けるとともに、他の交通システムとの比較を行うなど、LRTに留まらないさまざまなアプローチを検討。
さらに2024年11月13日には、構想に反対する団体関係者から同県知事が直接意見を聞く会を開催している。
構想への反対意見は、鉄軌道の敷設は富士スバルラインの大規模工事が必要で、環境破壊が避けられない、建設費や災害復旧費のコスト面が過大などの指摘があったという。
これらのプロセスを経て、同県ではLRTやその他の選択肢について検討を重ねた結果、鉄軌道案を断念、低コストで環境に配慮した「富士トラム」を検討し、実現可能性を見出したとしている。
同県は今後、「(仮称)富士トラム」の推進にあたり、県民に丁寧に説明を行い、十分な合意形成を図りながら、計画を進めるという。