【ニュース】 高知県の中芸5町村、「森林鉄道から日本一のゆずロードへ−ゆずが香り彩る南国土佐・中芸地域の景観と食文化−」が日本遺産に認定 高知県奈半利町
2017.05.01
高知県は4月28日、高知県の中芸5町村(奈半利町・田野町・安田町・北川村・馬路村)が文化庁に申請していたストーリー「森林鉄道から日本一のゆずロードへ−ゆずが香り彩る南国土佐・中芸地域の景観と食文化−」が平成29年度の日本遺産に認定されたと発表した。
「日本遺産」は、文化庁が地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを認定するもの。
27年度からスタートし、過去37件が認定されている。
29年度は新たに17件が追加され、高知県では「四国遍路~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」に次いで2件目の認定となる。
日本の林業発展に大きく貢献した「森林鉄道」は、山から伐り出した木材を運搬するための鉄道で、明治時代から昭和40年代ごろにかけて活躍した。
全国各地の国有林で整備され、その合計は1,174路線8,180km(林野庁調べ)にも及ぶ。
明治時代には、トロッコに木材を積み自然の勾配を利用して動かしていたが、大正10年には機関車が普及。
次第に蒸気機関車からガソリン車、木炭ガス車、ディーゼル車と移り変わり、木材の大量輸送を可能とし、林業の振興に大きく貢献したという。
県面積の森林率が84%と日本一を誇る高知県は、豊富な資源を生かして林業で発展を遂げてきた。
特に雨量も豊富な東部の「中芸地域(奈半利町・田野町・安田町・北川村・馬路村)」は、銘木「魚梁瀬杉」の産地として一目置かれている。
森林鉄道は、かつて国の営林署が置かれていた山間の馬路村・北川村から、海岸沿いの安田・田野・奈半利町を環状に繋ぐように整備された。
木材の搬出だけでなく、子供達の通学、荷物の運搬などにも利用され、まさに生活を支える存在だったという。
現在でも、中芸地域にはその繁栄の跡をみることができる。
平成21年には、魚梁瀬森林鉄道の5ヶ所の隧道と9基の橋梁が森林鉄道遺構として、複数町村にまたがる広域指定では日本で初めて「国重要文化財」の指定を受けている。
時代の移り変わりと共に林業が縮小するなか、中芸地区の人々は新たな産業として「ゆず栽培」に取り組んだ。
中芸地域のゆず栽培は、北川村で生まれ坂本龍馬とともに京都で暗殺された中岡慎太郎が、村人のために推奨したといわれている。
この地区には、ゆずの果汁を酢の物や刺身にかけて食べたり、ゆずの果汁でしめたご飯に野菜をのせた田舎寿司を食べる当時からの習慣が、今でも受け継がれているという。
そんなゆずの魅力と価値に改めて注目した地域の人々は、ゆずを産業化するため、軌道が敷かれた川沿いの土地や、木材を運び出していた山間を次々とゆず畑に変えていった。
現在では、地区全体の作付面積は200haを超え、生産量は日本一。
欧州をはじめとする世界各国へ輸出するまでになり、一次産業から加工業も盛んで、各町村でジュースやポン酢などの開発・製造も盛んに行われており、30年を超えるロングセラーの柚子ジュース「ごっくん馬路村」も中芸地区で生まれた商品だという。