【ニュース】 芝浦工業大学の濱崎仁准教授、世界遺産「軍艦島」の建築群を維持する研究を発表 長崎県長崎市

2015.07.17
芝浦工業大学(東京都江東区、村上雅人学長)工学部建築学科の濱崎仁准教授は7月14日、JCIコンクリート工学年次大会2015(主催:公益社団法人日本コンクリート工学会)で、論文「亜硝酸リチウム含浸による経年構造物の補修工法に関する屋外暴露試験」を発表した。

濱崎准教授を中心とする研究チームは、軍艦島(端島、長崎県長崎市)の鉄筋コンクリート構造(RC造)建築物の補修について、2011年より現地調査を実施しながら、建築群を維持する研究を行ってきた。
今回の発表は、これまでの研究結果を公表したもの。
20150717芝浦工業大学

軍艦島は、7月5日にその一部が「明治日本の産業革命遺産」としてユネスコ世界文化遺産に登録されたが、島内に現存する日本最古といわれるRC造集合住宅を含めた建築群は、著しく劣化が進んでいる。

損傷が進んだ歴史的RC造建築物の保存は世界的にも例がなく、非常に困難な課題だが、濱崎准教授は、歴史的価値を損なわずに経年の変化を抑えるコンクリート建築物補修工法として、「亜硝酸リチウム」を使用して鉄筋の腐食を治療する有効性を検討。
コンクリート崩壊の根本原因を治療する「鉄筋の腐食抑制」に主眼を置き、様々な補修材料・工法を施した試験体を作製、現地で暴露実験を行った。

実験結果から、当時の打放しコンクリート同様の外観の色や形状を変えずに鉄筋の腐食を食い止めることができる防錆剤「亜硝酸リチウム
(LiNO2)」のコンクリートへの含浸および注入工法に着目、軍艦島の
RC造建築物の補修工法として、その有効性や必要量等を確認したという。

効果が実証されれば、歴史的なRC造建築物の保存・修復だけでなく、一般の近代建築物や社会インフラ全体の長寿命化にも役立つことが期待されるとしている。