【ニュース】 農地は耕作放棄されても防災効果は維持される可能性が高いことが判明、東京都立大学などによる研究 東京都八王子市
2025.06.16
東京都立大学(東京都八王子市)大学院都市環境科学研究科の大澤剛士准教授、京都産業大学(京都市北区)生命科学部産業生命科学科の西田貴明教授、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都港区)の遠香尚史上席主任研究員は、関東地方の市区町村を対象に統計情報等を活用した分析を行った結果、水田や畑とった利用形態に関わらず、農地は耕作放棄されても防災効果は維持される可能性が高いと発表した。
同研究は、環境研究総合推進費2G-2201「適応の効果と限界を考慮した地域別気候変動適応策立案支援システムの開発」と、内閣府総合科学技術・イノベーション会議 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の一環として実施したもの。
同研究結果は、2025年6月12日付で、SPRINGER-NATURE社が発行する英文誌「Scientific Reports」上で発表しており、耕作放棄地が拡大する中、農地を活用したEco-DRRを活用しながら、水害対策を講じる際に重要な知見になるとしている。
気候変動の影響等によって増大、甚大化する自然災害に対応するため、農地や都市緑地といったグリーンインフラに防災インフラとしての機能を期待する、生態系を活用した防災・減災(Ecosystem based Disaster Risk Reduction :Eco-DRR)という考え方が注目されている。
Eco-DRRは、防災・減災にとどまらず、生物多様性の保全をはじめ、人間社会に様々な利益をもたらすことも期待されているという。
近年、農地が持つ防災・減災効果は広域的な評価が進み、その社会実装に期待が集まりつつあるが、その一方で、人口減少や高齢化等に伴い、日本各地で農業活動が停止した耕作放棄地の拡大が進んでいるという社会的な課題がある。
耕作放棄された農地は、食料生産機能をはじめ、様々な機能が失われるが、これが防災・減災におよぼす影響は明らかにされていなかったという。
同研究では、関東の海に隣接しない3県を対象に、統計情報等を使用し、耕作放棄と水害発生の関係を統計モデルで検討したところ、放棄は農地が持つ防災効果にほとんど影響しないという結果が得られた。
この結果は、たとえ放棄された農地であっても、土地転換等をせずに維持することで、防災インフラとしての機能が期待できる可能性を示しているという。