【ニュース】 ミズノ、創業者の経営思想とスポーツ文化の象徴「ミズノ淀屋橋店」が94年の歴史に幕、6月30日に閉店 大阪府大阪市
2021.05.19
美津濃株式会社(ミズノ、大阪市住之江区、水野明人社長)は、淀屋橋駅西地区第一種市街地再開発事業に伴い、1927年に本社屋として完成した「ミズノ淀屋橋店」(大阪市中央区)を、2021年6月30日に閉店する。
今後は、2025年秋以降に完成予定の再開発ビル内に、直営店を出店する予定。
「ミズノ淀屋橋店」は、後に商業の中心地となる大阪・淀屋橋に、大阪で7番目の高層ビルとして1927年に完成した(「スポーツは陸から海から大空へ~水野利八物語~」、1973年、ベースボール・マガジン社刊より)。
以来、水野利八の経営思想の象徴として、100年近くにわたりスポーツ文化の発展とともに歩んできたという。
創業者の水野利八(1884年~1970年)は、濃尾地震(1891年)で被災した水野家の復興の証として100尺のビルを建てるという目標を立て、1906年に水野兄弟商会を創業。
しかし、「個人的な責務を果たして安心してはいけない。はるかに大きい社会的な責任(スポーツ産業の発展)が残っている」と自戒の意味を込め、敢えて98尺8寸のビルにしたという。
建物は岡部顕則氏が設計、1927年当時の最先端の技術とデザインが採用された。
関東大震災(1923年)後に建築されたため、建物の強度を高めることを目的に現代の基準よりも短い間隔で梁が入っており、梁が柱と接合する箇所の下部に斜めの補強材「ハンチ」が入れられ、より強度を高める工夫がみられる。
屋上エレベーター室にはロマネスクデザイン様式(古代ローマ風でアーチを多用した優美なデザインが特徴の造形手法)、軒や階段手摺にはドイツ表現主義デザイン(1920年代にドイツで流行した造形手法)を採用した。
2階の踊り場には、更紗柄の入った1枚物の黒大理石(厚さ4.5センチ)が使用され、1階の階段裾は下段の幅を広げることにより、高揚感を高めるデザインになっているという。