【編集部取材】 来年で設立10年を迎える「日本で最も美しい村」連合、これまでの取り組みと今後の展望などを発表 東京都渋谷区
2014.12.01
特定非営利活動法人「日本で最も美しい村」連合(東京都千代田区、会長:浜田哲美瑛町長)の市原実理事・事務局次長は11月28日、東京都渋谷区の八雲クラブで開催された比較住宅都市研究会(主宰:海老塚良吉氏)で、来年で設立10周年を迎える同連合のこれまでの取り組みと、今後の展望などについて発表を行った。
最も美しい村運動は、1982年にフランスで始まった運動。
日本では、カルビーの松雄社長が1998年にその存在を知り、2002年にフランスの協会事務局長に面会、ポテトチップの原料を栽培していた美瑛町の浜田町長に美しい村運動を紹介したのが始まりだという。
2003年には浜田町長がフランスを訪れ、他の地域に加盟を働きかけ、2005年に7町村でスタートした。
同連合による審査を通過し、現在加盟している地域は全国で55か所。
「訪れてみたが美しくない」という批判もあるが、同連合が考える「美しい村」とは、必ずしも絵葉書的な美しさではなく、人間の営みを含めた生活全体を総合的に判断したものだという。
今回、発表を行った市原氏は、発足から3年が経過した2008年より同連合の活動に参画、連合に加盟を希望する地域を訪問し、審査をする業務を担当した。
しかし当時の地方自治体は、まさに「平成の大合併」の渦中。
連合に加盟することは、合併をぜず、自立の道を進むという意思表示となることから、多くの村が躊躇した。
そこで市原氏は、自治体からの申し込みを待つのではなく、知り合いの地域を訪問。
加盟を呼びかけたところ、10地域ほどが同連合に加盟した。
現在では加盟地域が増え、知名度が高まってきたことから、審査料を有料化し、スタッフ2人が1泊2日で調査、昨年は7か所から応募があったという。
加盟条件は、人口1万人以下の自治体や地域で、地域資源が2つ以上あること。
導線となる道路に派手な看板などが無く、家々には花が活けてあり、ごみ箱なども目立たない位置に設置しているかなど、事細かに観察し、審査する。
同連合は年間予算は2,400万円。
加盟する自治体からの会費のほか、企業会員や個人準会員からの会費のみで賄い、公的な補助金なしで運営する一方、営利事業は行わないとしている。
企業会員には、メーカーや旅行会社など65社(2014年10月1日現在)が加盟しているが、加盟企業には特にメリットは無く、現況ではあくまでも人的なつながりが中心だという。
旅行会社については、一見すると加盟自治体とタイアップすることでメリットがありそうにも思えるが、加盟自治体が点在しているため、周遊コースが組み難い現状もある。
一方、同連合の趣旨に賛同し、同連合の「会報誌」を自主的に発行する企業も存在するなど、同連合と企業の関わり方は様々だ。
こうした中、同連合では、空き地や耕作放棄地を利用した再生可能エネルギーの問題や、2地域居住・移住の問題、食の問題などにも取り組みはじめた。
今後は、バイオマスなどについて欧州で調査を実施するほか、国内では人口が減少していない自治体の取り組みなども研究する。
しかし、取り組みの根底には、あくまでも「ツーリズム」があるという。
まずは加盟自治体に訪れてもらい、リピーターや交流人口を増やすのが第一義といったところだろう。
この点では、宿泊業や旅行業、その他観光関連産業にとって、同連合とのマッチングには今後、大きな商機があるように思える発表だった。